障害受容×言葉の紹介
病児の母になって初めて、想像を絶する孤独感、孤立感というものに出会いました。自分は誰にも見えていない。知っていた世界が、世界中が、さーっと遠のいていくようでした。今回は、こういった感情に飲み込まれそうになりながらも奮闘を続けているご家族に届けたい詩を訳しました。
敬意をもって、理解を示そうとしてくれる人がいること。傾聴する耳を持ち(listening ears)、共感を示してくれる人がいること。ねぇ、見えているからね、ってわざわざ言ってくれる人がいること。これは救いです。I see you、見えているよ、という詩をお届けします。
出典
*This story was submitted to Love What Matters by Alethea Jo, WriterAlethea &Mshar John walker/Flickr
I see you taking your kid to therapy while your friends take their kids to football or ballet.
みんなはね、子供をね、少年野球だったり、バレエのレッスンだったりに連れて行っているよね。でも、あなたがあなたの子供を連れていく場所は、セラピー。見えているよ。知ってるよ。
I see you sneak out of the conversation when all your friends boast about achievements and exam notes.
みんながね、子供が達成したこととか子供のテストの結果なんかを得意そうに話してるときにね、あなたがその場からすっといなくなったりすることがあるよね。見えてるよ。
I see you juggle events and meetings.
たくさんのアポを調整して、ぐちゃぐちゃのスケジュールをこなしてるんだよね、知ってるよ。
I see you sitting on the computer for hours investigating what you child needs.
知ってるよ、あなたがパソコンでいつも何時間も検索してること。何が子供に必要かって、調べてるんだよね。知ってるよ。
I see you make a bad face when people complain about what looks like nonsense.
みんなは本当にどうでもいいことをぼやいているなって思っちゃうときもあるよね、そうなっちゃうよね、分かるよ。
I see you disappear little by little but you keep going beyond for your family.
ちょっとずつフェイドアウトしているよね、忙しそうだもんね。でも、うん、家族のために邁進しているんだよね。わかっているよ。
I see you pull strength from weakness with a force you didn’t even dream you had.
大変な中なのに、強い自分をなんとか引き出してるんだよね。まさか持っているなんて思いもしなかった力がわいてきたんでしょう。すごいよね。見えてるからね。
I see you showing respect for teachers, therapists and medical professionals who help your child and help you.
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先生、セラピスト、医療関係者の方たちに、敬意を表して、いつも接しているよね。子供のことも助けてくれてるし、あなたのことも助けてくれてる人たちだよね。わかっているよ。たくさんの人たちに感謝を示して関わってもらっているんだよね。えらいね。
Watching you wake up early in the morning to do it all again after another chaotic night.
ケアで大変でカオスで寝れない夜がまたあったんでしょう。それでもあなたはまた朝早くから起きてる。何度目なんだろうね。今日は疲れてるね。わかっているよ。見えているよ。
I see you when you’re on the edge of the precipice struggling to live.
崖っぷちで闘っているときもあるよね。どうやって生きたらいいんだよっていうくらいの断崖絶壁でね。見えてるからね。
I know you feel invisible, like no one notices.
知ってるよ、なんだか、私は透明人間なのかな、だれも私のこと気が付いてないみたい、って感じているときがあるってことを。
But I want you to know that I see you
知っといてもらいたい。私はあなたのこと、見てるからね。
I see you push forward always.
いつも頑張ってること、知ってるよ。
I see you choose to do everything you can to give your child the best care at home, school, therapy and the doctors.
家でも学校でも療育でも病院でもどこでも子供がベストなケアをうけられるように、妥協しないでなんっでもやってあげてるんだよね。見えているからね。
What you do matters.
あなたがしてることは、すごいことだよね。
It’s worth the struggle.
めちゃめちゃ大変なんだけど、それだけの価値があることだよね。
On those days when you wonder if you can make it one more minute, I want you to know I see you.
もうあと1分も持ち堪えられないんじゃないかなって思っちゃうような日にはね、私のこと思い出してほしい、私あなたのこと見えてるからねって。
I want you to know that you are beautiful.
あと、あなたはとてもビューティフルということも知っていてほしい。
I want you to know it’s worth it.
あなたがしてること全て尊くてかけがえのないことだって、私も思ってるからね、っていうことも知っていてほしい。
I want you to know that you are not alone.
一人じゃないよってことも知っていてね。
I want you to know that love is the most important thing, and that you are the best at it.
愛が一番大事だよねってことも分かっててほしい。あなたが子供に注いでいる愛情を見るにつけ、あなたは一番の愛の施しの実行者なんだから、言うまでもないことかもしれないけどね。
And in those days when you see an improvement, those moments when hard work has its reward, and you can taste success, I’ll see you then too.
もちろん、日ごろの努力の結晶がついに実る瞬間、発達してるなって感じれたとき、うまくいったじゃんって味わえた時、そういう長く待ち望んだ成功体験を一つ積めたとき、そんなときも見ているからね。
And I’m proud of you.
見てるし、うん、誇りに思うからね。
Whatever day today, you are doing it right. And I see you.
あなたのこと、見ているからね。
今日がどんな日だろうとね、あなたはうまいことやってるし、すごいよ。大丈夫。
シホっぴ解説
もう少し細かくいうと、訪問薬剤師さんに電話をかけて処方薬の受け取り時間を調整するだとか、役所の障害福祉課へ行き必要なサービスを継続的に受けられるように書類を作成するだとか、地域の相談員さんの提案に乗っかり、<ちょっと気が早いのではないかと思いながらも>将来お世話になるかもしれない福祉施設の見学へ行くアポイントをこなす、なんていう日々が始まります。
役所で障害福祉課の札を引いて、待っている自分。保健所へ足を運んで難病指定の窓口に恐る恐る並ぶ自分。番号が呼ばれる順番を待つ切ない気持ち。窓口で、自分の子供に重い障害があることを、震えながら声に出し、震えながら書面を埋めました。子どもの環境を整えるためと分かっていても、アセスメントの基準に照らされ、評価をうける時間は、精神的に堪えました。公式に障害児。公式に難病児。あぁ。
それとは別に、子供が生きやすいように創意工夫を重ねたり、よりよい治療法やリハビリについて熱心に調べものをしたり、仲間にアドバイスを請うたり。
どんなに心を打ち砕かれても、どんなに結果が出なくても、夜中の緊急搬送があってどんなに夜が長くても、生活が続いていきます。自分だけが別世界につまみだされたかのような、パラレルワールドに紛れ込んだような感覚を味わいました。
the other world、知らなかった世界、を知るには、時間を要しました。新しい言葉を覚えるような、新しい言葉でお話をする初めましての人たちと会うような時間が続きました。
数年という単位で時間が経過していくうちに、不思議な感覚がおそいました。
障害のある世界で使われている言語を必死で学び理解が深まっていくと、それらを障害のない世界の人にもうまく説明することができるようになって、2つの世界を行ったり来たりするのがうまくなるというか、だんだんその隔たりがとけていくような感覚がありました。
私はこの状態を、バイリンガルになって日本にいてもアメリカにいてもどっちでも大丈夫になった感じと似ているなって思っています、笑
I am unseen、私の事情なんて誰も知らない、って思いながら、子どもを連れていないで電車に乗っている日があります。ーたとえば、入院中の我が子に会いにいくときなどー。突如、私だって、今見えているものしか見えていないではないか、私が想像しきれていない事情を、いま行き交う一人一人それぞれが抱えているんだな、どんな事情の人と乗り合わせているかなんて知り得ない。そう気が付くというか、そのようにperspective見え方が変わっていく経験をしました。
障害児の母という役割をしている時間や、必ずしもそうでない時間(キャリア形成など)、様々なお役割の時間が人にはある。
がんばっていること、知っているよ、you are wearing many hats(英語では、いろいろな帽子をかぶる、といいます)忙しいのに、がんばっているね、見ているよ!
I see you. You are not invisible. What you do matters. I want you to know that you are very beautiful.
見ているよ。透明人間なんかじゃないんだ。あなたがしていることは重要なことで。知っておいてほしいんだけど、You are beautiful.美しいよ。
ではでは。