ポジティブ英語

落ちた穴の事を知ってる。出る方法も知ってる。

落ちた穴の事を知ってる。出る方法も知ってる。

障害受容×言葉の紹介2

☆前回の<障害受容×言葉の紹介>はこちら
https://shihoppi.com/there-are-two-worlds/

シホっぴ
シホっぴ
今回は第2弾をお届けします。
穴におちたら、という例え話もとても気に入っています。

障害のある子どもを育てているご家族の状況を穴に落ちてしまった状況に例えて、関わる関係者の方たちの対応を、シニカルに描いています。本質を捉えているな、と思わず笑ってしまったので、掲載したいと思います。ご家族に関わる方たちは、どんなふうに、助け出してあげたいか、家族介護者の視点に今一度立って考える機会にしていただけたらありがたいです。(スピード感を持って、助けに来てくれると嬉しいです。)

A special needs parent fell in a hole 
障害のある子供を育てている親御さんがね、穴におちたとしましょう。

Family member : What hole?
家族の反応:何?穴って何?

Boss: Oh that’s a shame. You can take the day off.
上司の反応:お、それは気の毒に!一日休みとっていいぞー!

Doctor: Can you take a diary of your experiences in the hole?
医師:では、その穴に落ちた経験について記録をとる、日記を書くことはできますか?

OBHDD: We will assess the size of the hole. However, it may take up to 18 months. 
発達診:その穴のサイズを評価しようと思います。最大1年半くらいお待たせすることになると思います。

Local authority: Sorry we don’t have enough money for a ladder
役所:すみません、ハシゴのための財源が不足しておりまして。

Charity: Here’s a form. Fill it in to apply to get on the waiting list for a ladder. 
慈善団体:こちらがフォームになります。ハシゴ待ちのウェイティングリストにサインアップなさる、といいことでいいですかね。こちらがフォームです。ご記入してお待ちください。

Another special needs parent: I’m here! I’m coming down there with you. I’ve been here before. I know how to get out and I won’t let you do it alone. 
障害児を育てている親御さん仲間:はい、いま着いたよ。私がきたから大丈夫だよー。いまもう下におりてるからね。あなたのいるところに向かってるからね。この穴ね、私も以前落ちたことがあるのよ。どうやって抜け出したらいいか知っているから任せてね。1人ででてこようだなんて無理言わないで。それはさせられないからね。(頼もしくて安心。自分が経験したことを惜しみなく共有。励ましの声をかけ続けながら、降りてきてくれる。)

気丈な人は、穴に落ちていることが見えにくい?

家族は、意外なことにwhat hole?え、なんだって、なんの穴?と反応しています。

例えば、ママさんが気丈なせいで、実は穴におちているにもかかわらず、その事実に、家族が気付けない、気づいてすらいない、ということがあると思います。

周りから見て、心配が”なさそう”な親御さんというのはいると思います。

たとえば、私。自分で積極的に情報収集をしてきたタイプだし、周りの様子にも配慮し、コミュニケーションがスムーズにいくようにあちこちに気を払って、子供への愛情の力がエネルギーですと言わんばかりに、前向きな気持ちを絶やさないように動いてきたつもりです。医療者の方からお褒めの言葉をいただくこともありました。もしかすると、穴に落ちて”なさそう”に一見すると見えるかもしれません。

シホっぴ
シホっぴ
夫や親兄弟が覚えておくといいのは、次の言葉です。

Just because someone carries it well doesn’t mean it isn’t heavy. 

単に、その人がうまいこと(荷を)運んでいるからといって、その荷が重くない、という意味にはならない。

つまり、障害児の母親をするというとても重い荷は(重そうに運ぼうが軽そうに運ぼうが)重い荷であることを認識してあげること。

重い荷であるにもかかわらずその重さを感じさせない、ひょいっと軽く運べるかのようにしている姿については、(本当は重いですよね、という共通認識・理解を示し)尊敬の気持ちを示してあげること。

その人のキャパシティをnever take it for granted当たり前だと思わないこと。

まして、その荷は実は軽いんじゃないか、なんて間違っても思わないこと、を伝えたいと思います。

周りに心配をかけたくないから、重い荷を軽く運んでいるかのように笑顔で運んでいる人が実は必死である場合があり、anxiety 苦悶やdepression抑鬱と無縁ではないということも伝えたいと思います。

家族が、what hole?と反応した意味(別解)

解釈の仕方によっては、家族も一緒になってもうすでに穴におちていて、what hole?という言葉がでてしまった可能性もあるのだな、と思います。

穴におちているという困難さを冷静に自分たちで認識することすらできていない、家族まるごと穴の中にいる、そういった場合もあると思います。誰にとっても障害のある子どもを育てることは大変な困難です。自助が期待されるばかりではなくて、困難さに気が付いてすらいないご家族には、まわりからの助けの手がのびてくるといいなと思います。

(穴での)記録をとって、診察の時に見せてください(医師)

実際てんかん発作を続ける我が子を救うためのステップが、この、記録をとりましょう、観察をつづけましょう、でした。

日ごろの症状の把握は母にゆだねられるのですよね。発作の映像をスマートフォンで撮影し、かかった時間、頻度、タイミング、記録をたくさんとるように言われます。

その記録、証言に基づいて投薬内容が決まるのだから、親の責任の重さが精神的にのしかかります。

体調の良し悪しの判断材料になるバイタル(体温、心拍、呼吸数、血中酸素濃度)や、屯用で使った投薬のタイミング等は、家族の証言がなにより重要なのは分かります。てんかん薬の効果を測るにも、とにかく記録です。穴のなかにいた私は、シートを渡されたりして、シートに記入しながら、どうやったら穴から出れるのだろうか、と絶望しながら、記録を取るところから始まりました。発作記録表を握りしめながら、まだ穴の中から遠くの光を見ていました。

ちなみに、発作の記録をとるには、nanacaraさんのアプリが便利です⇒

【てんかん発作記録アプリ】てんかんのお子様をもつご家族向け発作記録アプリ|nanacara

穴に落ちたんですね、では、評価にまわしましょうね

たとえば、発達診察では、評価をする、というのが大事にされていますね。また、発達障害が気になります、グレーなのです、となると、発達外来へ行って評価をしましょう、なんて流れになります。で、問題が、予約がとてつもなく込み合っていて、半年1年待ち、なんてことがあるんですよね。穴の中にそんなに長くいていいわけないのですけどね。穴からの出方とか、穴から出る為に今なにかできること、たとえば、穴の中でどんなトレーニングを始めようか!とかが知りたいはずなのです。それが、落ちた穴のサイズを計測しにいくアポイントメントが来年の春先に決まる、とか、まさに典型的な感じがします。いろいろと状況が変わってしまいますよっていうね・・・その間に何かしてあげられることとか、、知りたいんですけれども、汗

同疾患児・類似疾患児の先輩家族・仲間

ピア、とは、仲間、対等な立場の人、という意味です。ピアカウンセリングとは、同じような立場や悩みを抱えた人たちが集まって支え合うことを言います。そう、このアナロジーの、Peer同胞家族たちの行動を読んだときに、まさに、手を取りに助けに来てくれたのがご家族たちだったなぁ、(ピアしか勝たん!←今風に言ってみました、少し古いかしら笑)とため息がもれました。私の場合は、連絡をとったすぐ翌日のことです。穴に落ちてしまった私のところに駆けつけてくれました。診察先の病院に来てくれたのです。私も後に同じことをしました。理解を示し、道筋を示し、脱出を手伝ってくれたのは、いつも、患者家族会の仲間や、病気は違えど、成長に伴うあらゆる悩みを共有してきた療育園などの仲間でした。これから一体何が起きてくるのか、という青写真、その攻略方法、日々関わりをもつあらゆる職種の方たちと渡り合うための言語運用能力と”傾向と対策”、みたいな玄人好みの手書きの虎の巻みたいなものが本当に必要で(量販店にあるガイドブックとは一線を画した)、それの蓄積があるのが、先輩ご家族たちでした。

シホっぴ
シホっぴ
役所は、支給が出せる・出せない、など教えてはくれるのですけど…。どうやって自分たちのニーズ(原点)を認めてもらい、供給に繋げられるか真剣に考えるのはいつも当事者な気がします。

まとめ

落ちた穴のことを知ってる人がいる、それだけで光が差すようでした。まして、出る方法も知っていて、実際に出た経験がある、そんなご家族に出会うと、苦しみが和らぎました。道なき道を先んじて歩んでいる、闘ってくれている障害児家族たちが、存在している、ということを知るたびに(優れた実践をしているご家族たちは枚挙にいとまがありません)元気をもらってきました。穴に落ちてみた当事者にしか言い得ないことがあると思います。

もちろん、このシニカルなたとえ話(穴に落ちているご家族にとっての、多職種の助け方について嘆いた形、ピアの寄り添い方を評価しているアナロジー)とは違って、ご家族に寄り添えているプロフェッショナル達がもちろんいらっしゃいます。医療者や事業者目線ではなくて、当事者を中心に置いたケアの循環を大切にしている活動もたくさん存在しています。

ハシゴの手配について、できそう・できなそう・時間かかりそう、とか言ってないで、とりあえず穴におちてしまったのに、電話をとって助けを求めた労力をほめて、怪我でもしていないか、穴の中のコンディションはどんなものなのか、そんなことも聞いてもらえたらやっぱり嬉しいのではないかと思っています。

ハシゴだけもらっても一人で登ってこれる状態かわからないじゃない?

それぞれのプロフェッショナルが提供できるものはそれぞれちがっていて、どれも大切なものです。きっと、うまく患者家族側に受け容れられ受け取られるためには、emotional help気持ちの面の支えやcompassionate思いやり・情け深さ、あるいはperfect hug or a listening earちょうどいいタイミングのハグだったり、聞く耳をもつこと、そういったことが大事なんだろうと思います。逆に言うと、そういったことなしでは、どれだけ制度が整っていても、絶望感の中にいるご家族に届かないのだろうと感じています。

穴の中から、叫ぼう。I hear you. 聞こえるよ。すぐ行くよ。

ではでは。