生活×日常風景
関東肢体不自由連合会(埼玉大会)
2024年度は神奈川大会で、今年度が埼玉、来年度は東京大会になります(関東の中で持ち回り)。今回は完全オンライン開催でしたが、東京は対面になるようです。
では、まいりますよー!
与えられた題目は、“PTAの活性化について”。か、かっせいか、について書いてみよ、と言われましても・・!
(活性化していいのか、そもそも、そこからですし・・・!)となりましたが、まずは学校紹介、つづいて本校の活動(とその意図)を紹介、そして、昨今の流れも踏まえて、肢体不自由校におけるPTA活動の意義にも触れながら、なんとなく↓のような感じに仕上がりました。
ご確認、ご協力してくださった皆様には感謝しきれません。
埼玉県の北部に熊谷特別支援学校が設立されたのが昭和42年。その10年後、昭和52年に、埼玉県の東部には、越谷特別支援学校が設立されました。本校は、来年度創立50周年を迎える大規模な肢体不自由単独校です。
設立当初は、その学区の広さから通学が難しい児童生徒もいて、寄宿舎が寮として活用されてきた時代がありました。(現在はQOLの向上を目的として活用されています。)
通学区域は、越谷市、川口市、草加市、三郷市、吉川市、八潮市、松伏町、蕨市、さいたま市、春日部市の9市1町です。
埼玉県の肢体不自由特別支援学校では、4つの教育課程を編成し、児童生徒それぞれの学びのニーズに応じた教育活動を行っています。
教育形態には、通学と訪問の2つがあります。学年や生活年齢を大切にし、個々の教育的ニーズに応じた学習グループを編成し学んでいます。
それでは本題に入ります。
そもそも、PTAとは何でしょうか。
“子供たちの学ぶ環境をより良くするため、さらには、保護者と教師か協力して、学校と家庭をつなぎ、より良い教育環境を作るための組織”、だと考えています。
PTA活動
PTA活動の「量」と「質」の見直しは、多くの学校で課題になっています。特に、共働き家庭の増加や、保護者の負担感の高まりをうけて、「無理なく、意味のあるPTA活動」を目指す動きが広がっています。
地域小中学校のPTA活動
地域小中学校のPTA活動は、登下校の見守りや学校行事のサポートなどを主活動としています、よね。
一方で、特別支援学校のPTA活動では、県に対して、毎年、子供達の学ぶ環境を改善するための陳情書を作成するほか、全国および地域の各肢体不自由の学校との連携・情報交換などをしています。
特別支援学校においては、子供たちの多様なニーズに合わせた活動が求められますし、子供たちの声の代弁をするという意義があるため、(安直に縮小していいといったものではなく)継続的に活動を続けていく必要があると思われます。
子供のケアに費やす時間
子供のケアに費やす時間が膨大であるばかりでなく、共働きのご家庭が確実に増えており、PTA活動のために時間を捻出することはとても難しくなっています。
PTA活動の影響で、子供と過ごせる時間が減ってしまったり、子供の通学状況に影響がでてしまったり、保護者が体調を崩してしまっては本末転倒です。PTA活動の負担が個人に集中することのないよう、バランスを考えることが重要です。
コロナ禍前
コロナ禍前は、対面での活動が多岐にわたり、大変さが話題の中心でしたが、現在では、今までの形に固執することなく、保護者の現状をふまえた参加しやすいPTA活動とは何かについて話すようになりました
本校での活動内容
本校での活動内容をご紹介します。
本部では、昨年度、PTA会費で災害時に備え、蓄電池を購入しました。
買いっぱなしで活用されない、という事態が起こらないようにしたいという想いと、災害について考えるきっかけになれば、という想いから、購入した蓄電池を使って、電気ケトルでお湯を沸かして、温かい飲み物を文化祭で振る舞いました。
災害時に温かい飲み物が飲めるとホッとするのではないかという目論見通り、防災意識も高まりつつ、気軽に交流できる場が生まれとても好評のうちに終わりました。
文化祭では、ここ数年、新しい技術や福祉機器の開発に携わる企業さんをお呼びして体験会をしています。
一昨年度は、身体機能を補助するサイボーグロボットHAL、昨年度は車椅子使用者の潜在力を引き出す、立って乗れる車椅子QOLOに来ていただきました。
QOLOに試乗した児童・生徒は、立位がとれる生活ができる可能性が広がって前向きな気持ちになれたと、大変好評でした。
開発者から直接開発ストーリーを聴く機会をつくれて、夢が広がったのではないかと思います。
形態食の試食会 ー宮源さんをお招きし、保護者同士で、摂食、食形態にまつわる悩みを話したり、便利なグッズについて情報交換ができる場となりました。
訪問学級の子供の保護者
訪問学級の子供の保護者からほかの保護者との関わりをもちたい、情報交換などをしたいとの要望をいただいたので、医ケア茶話会と称して、交流会を設けました。
交流する機会がもてていないために、訪問籍のご家族のニーズが拾えていない、通学していれば周りの保護者との関わりが出来て自然と耳に入ってくる情報が届いていないなどは懸念でした。
通学形態によって不利益がないように、訪問籍のご家庭にも情報が届くようにすることはとても大切なことなので、継続的な開催を考えています。
タッチケアの体験会:ケアしている人にもケアが必要ではないか、という観点から、教職員、保護者でスウェーデンタッチケアについて学び、体験しました。タッチケアを受けたあとの穏やかな表情を見ると、やってよかったなと思います。
講演会の開催:いつから、どんな準備をしたらいいの?なかなか一人では調べるのが進まないという人も多いので、障害年金について、講演会を開催しました。
災害に関する講演会:また、関心の高まりに合わせて、災害時の対策について、講師を招き講演会を開催しました。平時から何をしたらいいか、考える機会になりました。
今後も、子供の学習環境を整える、という目的のために、学校側と保護者が相互に連携して、保護者もワクワク楽しみながら、何ができるか、どうできるか、前向きに考えていきます。
活動準備の負担感はできるだけ軽減し、効率的に運営して、交流する機会を増やしていければいいなと考えています。
意見を集める仕組みの改善
今までは、紙面で意見を伺っていましたが、回収率の低さが問題になっていました。
現在は、グーグルフォームやラインワークスのアンケート機能などを活用し、保護者の多様な声を集められるようになってきました。
解答する側も集計する側も便利になってきています。集計にかかる時間は減り、集計内容の共有も楽になりました。
いつでも、どこからでもアクセスできるようになったので、時間拘束が減り、ライフスタイルに合わせて活動ができるようになりました。
陳情書の作成は、子供の権利擁護のため、PTAの大切な役割であります。こどもたちや保護者の声を教育委員会や行政に届けることで環境改善につなげていけるよう、PTA本部が取りまとめをしています。
令和6年度からは、携帯電話からQRコードを読みこめば、陳情書に関する意見を本部に伝えられるようになりました。今後も、時代に合ったツールを活用することで、より幅広く意見を集めて、反映していければ、と思っています。
PTA活動これからのカタチ
参加しやすい体制づくりが何よりも大切です。
学区域が広いことは特別支援学校の特徴といえるし、子供の体調不良は頻回というご家庭も多いことから、ズームなどを使ったオンライン会議の活用は、距離のハードルを下げて、誰もがPTA活動に参加しやすくなるので、とても良い方法だと思います。
今まで免除対象とされていたために意見を吸い上げにくかった訪問学級の保護者や保護者ご自身の体調、親の介護などで学校へ出向くことが難しかった方にも参加しやすいPTAになるのではないかと考えています。
実際に今年度は訪問学級の保護者が本部役員になりました。参加しやすさを大切にして多様なPTAを目指しています。
旧来の対面での理事会や総会の開催は、資料の印刷、配布、当日の設営などPTA本部の仕事負担が大きかったので、少しずつ書面開催やハイブリッド開催を取り入れています。現在は、資料については、アプリを使って配布しています。
デジタル化の推進
越谷特別支援学校PTA本部では、デジタル化をすすめるために、ICT担当者をおいていて、担当者を中心に、デジタル環境が整ってきています。
また、学校全体としては、今年度、LEBERというアプリを採用しました。出欠席や学校からの連絡が一元化され、配布物の印刷と配布の手間を簡略化できて、教職員もPTA役員も効率的に仕事ができるようになりました。
今後は、保護者から簡単に意見を集約するしくみ(たとえばラインオープンチャットなど)や、保護者と教員間が相互にコミュニケーションをとれる・とりやすい仕組み(たとえば、連絡帳のデジタル化)についても考えていけるとよりよいと考えています。
地域との連携
卒業後になれば、子供達が地域に出て生きることを見据え、地域で生きていく力を培うことも大切であると考えています。PTA本部役員も参加させていただいている、学校運営協議会、コミュニティスクールでは、年2回、交流している地域の小、中、高等学校の校長、市の福祉課、福祉施設の総合施設長、市の観光協会の方などをお招きして、子供たちの今、そして卒業後を見据え闊達な議論がされています。
地区活動
また、越谷特別支援学校は、地区ごとの活動もしています。
地区ごとに、市長に挨拶、陳情、茶話会、施設見学などの活動をしています。
居住している地区のみで生活が完結することは考えにくく、児童生徒ひとりひとりの障害特性によって、生涯で使う事業所は居住地区をこえたものになっていくので、今後は地区活動内で共有されている知識を全体にも流せるようにする、など、各地区からの活動内容の発信を促すような仕組みも大切であると考えています。障害のある子どもを育てる家族当事者同士で忙しい中、情報共有するには、簡便な仕組みであるほどありがたいので、時代に合ったツールを選んでいきたいです。
仕事の効率化に助けられて、少人数化が実現できていますが、理事になった方、地区長、本部役員に過度に負担が集中しないように、学校側と協働することが大切だと思います。
PTAの「量」を減らしつつ、「質」を向上させるには、保護者の多様な事情を考慮し、誰でも参加しやすく、効率的で意義のある活動を厳選することが重要です。
「なんとなく続けている」活動を減らし、既存のやり方にとらわれずに、”こんなことを是非やってみたいよね”、ということを叶えていく、そんなPTA活動にすることで、PTAの価値を高めることができると思います。
学校で過ごす児童生徒の様子を見る機会が増えたり、学校側にフィードバックをする機会が得られたり、コミュニケーションをとる仲間が増えることで、学校生活が楽しくなったり、積極的に参加することで変化が起こせたりなど、本部役員や理事になるモチベーションになるようなことを伝えていくこともPTA活性化のためには大切なことだと考えています。
この発表を踏まえて
この発表を踏まえて、小グループに分かれて、各学校での取り組みについて教え合ったり、課題に感じていることなどを話して共感しあったり、地域や学校毎の特徴の違いについて学び合ったり、そんな行事も!そんな役割分担も!目からうろこといいますか、各校それぞれ特徴あるPTAなのだなぁと学びの多い、とても有意義な対話をすることができました。
特に、広報でPTA活動について上手に発信をしていらっしゃる学校、お祭りなど学校と地域との交流イベントを開催する学校、地域小学校と支援学校のPTAでの交流があり、相互にこどもたちの作品を展示しあって、保護者が相互の学校に足を運ぶきっかけ作りをされている学校などがあり、印象的でした。
伝える努力をすること、相手に興味を持つこと、とても大切なことだと思います。
押し付け合う空気があるPTA、“こどものために頑張りましょうよ”、とかって、言われると、やっている人は、いいことをしている、みたいな気分になっていてくる。
参加しない、できていない人がまるで、“思いのない人たち”であるかのような、“こどものためを想っていない人達”であるかのような、対立構造のような感じになってしまう。それって幸せになる考え方じゃないよねって。
もうここから心は掴まれましたね。
じゃ、みんなが幸せに参加できるようにするにはどうしたらいいのかな、と関根さん。
PTAという場は、保護者の生涯学習の場である、って捉えなおしてみるのはどうだろう、と関根さん。自分が学びの主体である、って考えるのってどうだろう。あの人はやっていない、なんていう雰囲気、、やだもんね。
なんだかね、そこにいた全員が、いま、この子たちがきっかけで、自ら選んで学びの時間を過ごしているんだって思えて、ふわっと前向きな時間が流れたのでした。
「この子らを世の光に」 (びわこ学園 糸賀一雄)
当事者である障害児こそが社会の内側から新しい社会を形成していく主体であって、憐れまれる存在ではない、光り輝く希望である、その生き方で周囲を照らす存在である、そう捉えるべきだ、という福祉思想
糸賀一雄の名言「この子らを世の光に」の意味とは?思想と実践を紐解く – SOCIAL CONNECTION
障害のある人がいたから地域が良くなったんだな、この子たちが社会を変えたんだよ、お母さんもPTA活動とか他の活動で、今日もゆりちゃんとゆりちゃんおお友達の言えないことを言語化するお仕事を精一杯したんだよ、そしてそれはとても楽しいことだな、って思いながら、幸せな気分で毎日目を閉じて眠りたいな、きっかけはこの子たち。
この子たちに照らしてもらってる。関根健一さんのお話のおかげで、そう確信させてもらえたのでした。
ではでは。